11歳で「推理作家になりたい」と思い、29歳で作家デビューをしました。
それから今年で19年になりますが、新人賞に応募しては予選であっさり落選していた日々を、つい昨日のことのように思い出します。
今では、新人賞の選考委員を務める機会も多くなったのに……。おかしなものです。
審査員として候補作を読みながら、「最終選考まで作品を送り込むなんて、大したものだ。いいなぁ、この人」と羨ましくなることがあります。
かと思うと、読む前からテンションが上がって、「他の委員や編集者が認めなくても、自分ならば理解してあげられる作品がくるかもしれない。
その時は、何としても落選から救うぞ」と気負うこともあります。
作家志望者だった頃の気分が消えていないどころか、まだ私の中に生々しく残っているのです。
多感な十代、二十代をずーっと「いつか作家になりたい。なれるだろうか。なってみせる」で過ごしましたから、死ぬまでこうなのかもしれません。
そんな私だからこそ、今、クリエイターを志望している方の力になれるでしょう。
たちまち夢がかなう魔法の言葉は知りませんが、あなたに「昨日の自分」を重ねてお話しすることにします。
創作に興味があり、愛してやまない小説や映画について熱く語れる人ならば、どなたでもウェルカムです。楽しくやりましょう。
有栖川有栖
1959年、大阪市に生まれる。
小学4年生で推理小説のおもしろさを知り、5年生で創作を始める。卒業文集の「ぼくの夢・わたしの夢」欄には、迷わず推理作家と書く。
中学3年の時、長編を書き上げて江戸川乱歩賞に応募。初落選。以後、高校・大学・社会人時代を通じて、たびたび落選。
大学時代は同志社大学推理小説に所属し、機関誌「カメレオン」に創作を発表。スポーツ紙にアルバイトで犯人あて小説を書く。
大学卒業後は書店に就職。
1989年、鮎川哲也氏の推挽をもらい、『月光ゲーム』(創元推理文庫)でデビュー。
以降、コンスタントに作品を発表し、1994年に作家専業となる。
1999年より、綾辻行人氏と共同で犯人あてドラマ『安楽椅子探偵』シリーズ(朝日放送)の原案を担当。
2000年に設立された本格ミステリ作家クラブの会長に就任して、05年まで務める。
2003年、『マレー鉄道の謎』(講談社文庫)で日本推理作家協会賞を受賞。
2006年に発表した作家アリスシリーズの第七長編『乱鴉の島』が「本格ミステリ・ベスト10」で第1位獲得。
2007年に発表した学生アリスシリーズの第四長編『女王国の城』は「本格ミステリ・ベスト10」で第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」で第3位、「黄金の本格ミステリー」に選出と高く評価される。
2008年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞。
2011年「本格ミステリ・ベスト10」2012年版で発表された「2001 – 2010 新世紀 本格短編 オールベスト・ランキング」で『スイス時計の謎』が第2位に選ばれる。。
2016年『幻坂』で第5回大阪ほんま本大賞を受賞。
2018年「火村英生シリーズ」(『怪しい店』と『鍵の掛かった男』が対象期間内の文庫新刊)で第3回吉川英治文庫賞を受賞。
主な著書 『双頭の悪魔』(創元推理文庫)、『46番目の密室』(講談社文庫)、『暗い宿』(角川文庫)、『白い兎が逃げる』(光文社文庫)、『乱鴉の島』(新潮社)などの小説作品のほか、『作家の犯行現場』(新潮文庫)、『迷宮逍遥』(角川文庫)、『正しく時代に遅れるために』(講談社)などのエッセイ集がある。